堕天使の誘惑

 

 

 悪魔たちの住む、通称「魔界」と呼ばれる土地から随分離れた人間たちの住む大陸。
 そこからまた少しだけ離れた都市に、彼女は済んでいた。
「ふぇ、暇〜」
 町外れにある丘の上、綺麗な芝生と木の生い茂るその丘の中心に建てられた大きな屋敷の中に、彼女は居る。
 大きなソファーに仰向けの体勢で寝転がり、呼吸の度に自慢の大きな胸が「たぷん」と音を立てそうなくらいに震えた。
 レス。
 それが彼女の名前であった。
 何もしていなくとも、その完璧なまでのプロポーションと美しい顔立ちが人を引き付ける、そんな女性だ。
「シオン〜、暇だよぅ」
「そうですねぇ」
 レスはソファで膝枕にしている女性に声をかける。
 視線は膝枕から天井に向かっているので、常に膝枕の彼女・・・・シオンの顔が視界に入るのだ。
 シオンはレスの赤く長い綺麗な髪をゆっくりと撫でながら、微笑む。
 汚れを知らないかのような微笑みが、レスを包み込む程の優しさを感じさせる。
 彼女はレスの恋人兼、従者兼、奴隷兼、メイドで、2人で住むには少し大きいこの屋敷でレスと暮らしている。
 レスの身の回りの世話の全てをやっており、怠け者のレスにとって無くてはならない存在である。
 メガネをかけており、レスの赤とは対照的な青く長い髪が美しい。
「何へらへらしてんだよぉ〜」
 その聖母のような微笑みもレスにはあまり通じないのか、レスは手を伸ばしてシオンの束ねられた後ろ髪を掴み、ぐいぐいと引っ張った。
「きゃぁっ、尻尾引っ張らないでくださいよぅ」
「るさい、暇だからひっぱるの〜!」
 シオンと一緒に居る時のレスは言動と行動が少し子供っぽい。
 もともと変な性格なので年相応に大人ぶったりもせず、無意識のうちにシオンの優しさに甘える傾向があった。
 もうすぐ齢300になろうという者の行動ではないのだが、彼女は決める時はビシッと決めればいいと思っている。
 普段少し間が抜けているのはその反動なのだろう。
「ん〜、レイファンのトコでも久しぶりに行ってみるか〜 あのアホいじれば暇つぶしにはなるだろ」
 レスは上体を起こし、シオンの膝枕から頭を放す。
「行ってらっしゃいませ、レス様」
「何言ってんの、オマエも行くの!」
「きゃぁっ」
 レスがシオンの身体を引っ張り、抱き寄せると、シオンは大きすぎるのではないかと思えるほどの胸に顔を埋めてしまう。
「ふゃぁ・・・・」
 シオンはレスの胸の大きさと柔らかさを堪能してしまう。
 ずっとこうしていたいと思える胸なのだ。
「ほれ、仕度しろ、すぐ行くぞ」
 強く抱擁したかと思うとすぐにレスはシオンを突き飛ばしてしまう。
「うゃぁっ」
 シオンは突然のことに驚き、床に尻餅をついてしまう。
 いつもの事なのでシオンは腹も立たないが、本当に、レスは変人なのだ。
 全く行動の予測が付かない。
 
 
 皆が「はにゅ〜ん」となっている時間・・・・昼過ぎ。
 レイファンの屋敷は昼食も終わり、メイド達もそれぞれ暇な時間をもてあましていた。
 ルキナとラミューレは絞り尽くされたお陰でまだ眠っているようだったが、他のメイド達は概ね起きているようだ。
 そんな、昼下がり。
 玄関のドアがギイイと音を立てて、開いた。
「おっす」
「あ、レス様〜、お久しぶりです〜☆」
 声を聞きつけて広間に出てきたリップスがレスを見つけ、笑顔で声をかける。
「どうも・・・お久しぶりです・・・・」
 レスの後ろからは青い髪の女性が恥ずかしそうに顔を出した。
「あ、シオンちゃんも〜、おひさ〜」
「退屈だから、久しぶりに来たよ」
「どうぞどうぞ、こちらへ〜」
 必要以上にはしゃぐリップスは、とてもシオンの何倍も生きているとは思えない。
 もっとも、悪魔と人間では時間の概念も違うのだから不思議なことではないかもしれないが。
 2人はリップスに連れられて玄関から真っ直ぐ歩いたところにある応接間へと通された。
 レスのはちきれそうなくらい大きな胸が、ソファーに腰を沈めるときに大きく上下に揺れ、リップスはその胸を指をくわえながら羨ましそうに見つめる。
 大きくて、美しい形を保っているのに非常に柔らかそうな胸は、リップスのみならず、メイド達の憧れなのだ。
 しばらくするとレスとシオンが来た事を知り、他のメイド達も応接間に入ってきた。
 今日屋敷に居るのはリサとリップスと、寝ているラミューレと、ジルと入れ替わりで帰ってきたセレーナである。
 セレーナはワザとワンサイズ小さなメイド服を着る事で身体のラインを明確にし、スタイルの良さを強調するような娘で、少し色気過剰かもしれない。
 仕事はかなり嫌いでメイド一番の怠け物なのだが、ラミューレには何故か逆らえない。
「うわ、セレーナ、あんたもいたの〜?」
 リップスが不満そうな顔で、入ってきたセレーナを見つめた。
「う、そんな意地悪なこと事言わないでよ、さっきも一緒に御飯食べたでしょうが〜」
「ニンジンばっかり私に押し付ける人なんてしらないも〜ん、すぐいじわるするセレーナ、嫌い」
「ふええ、そんなぁぁ・・・・・」
 セレーナはハンカチを取り出して、目にあてがった。
 一応泣いているつもりなのだろうが、ワザとらし過ぎてあまり演技にはなっていない。
「泣きまねしても駄目だもん〜」
「しくしくしくしく・・・・・・・ちぇっ」
「お前達見てると退屈しないよ」
 レスは苦笑しながら2人に言った。
「セレーナなんて、あとでラミューレさんにいいつけてやるもん〜」
「ええっ、そ、それだけは・・・・ドキドキ」
 セレーナはラミューレの名を聞いた途端に赤面し、スカートの上から股間を押さえた。
 彼女は両性具有で、今まで何人もの悪魔や人間をその肉体で虜にしてきた。
 特に素晴らしいのは自慢の巨根で、擦りあわせても、相手に入れても・・・・・そして、自慰に耽っても、それは最高級の快楽を自分と相手に与えていた。
 だが、そんな彼女も、ここへ配属された事で最高だと思っていた自分のペニスへの自信を見事に打ち砕かれてしまったのだ。
 彼女以上の巨根を持つラミューレが居たからである。
 大きいだけならば今までも彼女の前に立ちふさがったのだが、ラミューレのペニスは大きさ、形、テクニック、全てがセレーナを上回っていたのだ。
 ラミューレとペニスを擦り合い、容赦無く何度も訪れる絶頂の前に、セレーナはラミューレの虜になってしまっていた。
 今までと、全く逆の立場になってしまったのである。
「な、なに股間おさえてるのよ・・・・セレーナってば、ヤらしい!」
「あん、だって、私、ラミューレと今日、まだ会ってないんだもん・・・・久しぶりなんだもん・・・・ちょ、ちょっと、行ってくるね・・・・・ラミューレのトコロ・・・・」
 セレーナはスカートの上からでも解るほど勃起し始めたペニスを抑えながら駆け足で応接間を出て行った。
「何しに来たんだか・・・・」
 レスとリップスは呆れ顔でセレーナの走り去って行った方を見つめた。
「う〜・・・・おはようございます〜」
 セレーナと入れ替わりでレイファンが応接間へと入ってくる。
 半分しか開いていない眠そうな目をこすり、目の下にはクマが出来ていた。
「レイファン様、おはようございます〜」
「ふにゃ〜」
「何かやつれてるね」
「ふにゃ〜・・・・ん・・・レスさんですか?」
「久しぶり〜ン」
 レスは手を上げて挨拶がてら微笑んだ。
「ふふ、良いところに来て下さいました、レスさん、うふ、うふふふふ・・・・・・・・・」
 レイファンの頭に、新たな作戦が浮かぶ。
「ん? 私の顔みて、どしたん?」
 レイファンの作戦とは、単純に言えば・・・・いや、元々単純なのだが、ルキナにレスをぶつけようと言う事である。
 両性具有、巨根、巨乳、絶倫のレスならばルキナに勝てるかもしれない。
 自分がルキナを送り返す魔法を完成させるまでにどうにかしてあのルキナという「メスガキ」を跪かせたいのだ。
 まったく、子供である。
「レスさん、私の部屋に来て下さい、ちょっと面白い事がありますので−−−」
「お前が誘うときってロクな事ないんだけれどね・・・・ま、いいよ、行こうか・・・シオンはどうする?」
「え? えっと、私は・・・・」
 シオンは困った顔できょろきょろと皆の顔を見る。
「シオンさんは私達がもらっちゃいます〜」
 リップスがシオンの腕を胸に抱く。
「リサと私とシオンさんでデザート作りたいで〜す・・・・あとね、あとねっ、編み物とか!」
 リップスは子供のようにはしゃぐ。外見は10代の女の子なので似合ってはいるが。
「そうだね、じゃ、シオンはリサとリップスと〜」
「あ、はい・・・・」
「そうそう、メイド服も着せちゃいま〜す☆」
「メ、メイド服!?」
 レスの目の色が変わる。
「メイドしおん・・・・どきどき」
「こらこら・・・・レスさん、ほら、行きますよ」
 レイファンはレスの関心がシオンの方へと行く事を恐れ、慌てて連れて行こうと手を引っ張った。
「え〜、だって、メイドしおん・・・・」
「はいはい、メイド服、ちゃんと後で1着プレゼントしますから」
「ほ、本当だな〜・・・・嘘付いたら変なことするぞ」
「はいはい、本当ですよ〜、ホラ、歩けっての」
 レスはレイファンに引きずられ、しぶしぶレイファンの部屋へと連行された。
 名残惜しそうな目でシオンを見つめていたが、その目に映っている映像はメイド服を着たシオンであった。
 
 
「ん〜・・・・・・」
 ルキナは夕方近くに、やっと目覚めた。
 リシエルのせいで精液を絞られ、随分と疲れたせいで長い時間眠ってしまっていたが、これでどうにか体力も元に戻った。
「調子狂うなぁ・・・・でも、今日も誰かお相手がいるのかな? へへ、楽しみっ」
 リシエルみたいなちょっとズレた人も居るが、それでも美人ぞろいのメイド達を相手するのは嬉しい事だ。
「もっとも、帰れるかどうか解らないのは凄く不安なんだけれど・・・・・・」
 自分を勝手に呼び出したレイファンという女性があまり協力的でないのが気にかかる。
 とはいえ、自分を戻せる人物が彼女しか居ないなら信じるしかないのだが。
「ふぅ・・・・そういえば、何も食べてないや、お腹すいた〜」
 ルキナはベッドから起き上がり、部屋を出た。
 
 
「ふぅん・・・・つまり、そのルキナって娘を手込めにでもしろって事?」
 レスはレイファンのベッドに寝転がりながら口を開いた。
 柔らかな布団にレスの身体が徐々にめり込んでいき、それがとても心地よい。
「人聞きの悪い事を言わないで下さいよ、私はただあの小娘をグチャグチャに犯してその辺に放り出して慰み者にしてしまえと言っているだけですよ」
「お前のその口調、ギャグなん〜??」
「っていうか、人の布団に寝転がらないで下さいよ、高いんですよその布団」
 レイファンは不満そうな顔で、自分のベッドに寝転がるレスを見た。
 本当に高級な布団で、値段の問題ではなくて手に入りずらく、この上ではいやらしい事もしないという布団なのだ。
 疲れた時にこのベッドで眠ると本当に次の日には疲れが取れてしまうような柔らかさを持っていた。
「そだね、高そう〜、ふかふかでシオンの肌みたいで良いなぁ、これ〜 で、本題だけれど、そのルキナって娘をヤっちゃえばいいのなら、引き受けるよ・・・その代わり久しぶりにアレでも用意してくれると嬉しいな」
「アレ・・・・ですか」
「そう、アレ」
 レスは少し下卑た笑みを浮かべた。
 邪な考えであるのは表情から見て間違い無い。
「ふふ、レスさんも好きですねぇ・・・・いいですよ、アレ、用意しておきます」
「うん・・・・・ところでこの布団、ほんと、ふかふかでいいよね〜・・・・・すやすや」
 レスは頬擦りしながら布団に顔を埋めると、そのまま動かなくなった。
「ね、寝るなー!」

 To be Continued