たしぎの場合

 

 暗い部屋の中。
 窓から挿し込む月明かりだけがたしぎの身体を照らし、薄暗がりに白い肌と光に反射するメガネのレンズだけがぼうっと浮かんでいた。
「ん・・・・・・んひゃぁ・・・」
 虫の音だけが微かに聞こえるような静寂では声が思いのほか響き、自分の押し殺したような喘ぎがダイレクトに耳元へと伝わる。
「あはぁ・・・んっ! んっ!」
 ベッドの上でたしぎは自慰に耽っていた。
 花柄のパジャマは胸がはだけ、殆ど裸と変らないような裸身を晒している。
 ズボンも下着も既に着けておらず、ベッドの脇にある椅子の上に無造作にかけられていた。
「はぁっ・・・くぅっ・・・んはっ・・・」
 押し殺そうとしても、漏れてしまう切なげな声。
 静寂の中では微かな声もまるで叫んでいるような程によく聞こえる。
「きゃう・・・きゃううっ・・・」
 股間にあるペニスを指で撫で回しながらたしぎは悶え続け、それから半分程皮に包まれた亀頭に人差し指を滑らせて、しばらく人差し指だけで撫で回す。
「くぅ・・・んふっ・・・」
 ペニスを固定しているもう片方の手で軽く亀頭を摘まむと、入口まで溜まっていた愛液が「ぷちゅっ」と音を立てて外へと流れた。
「ぬるぬるぅ・・・」
 撫で回した指が愛液に滑り、自然に速度は早まっていく。
 くちゅっ・・ちゅちゅっ・・・。
 喘ぎと共に粘液の音も加わり、静寂だった部屋が次第に賑やかになった。
「きもひ・・・・・・ぃひぃ・・・」
 亀頭を滑っていた指もそれだけでは満足できなくなり、包皮の中へと滑り込んで、ペニスの内側をかき回し始める。
「ひゃっ!!! ん・・・っ・・・」
 自分自身の下した快楽に大きく声を張り上げてしまったたしぎは恥ずかしそうに顔を赤らめて、声が漏れないようにと顎へ力を込めた。
 しかしそうしていても快楽が強くなるにつれてまた、溜息交じりの喘ぎは外へと排出されてしまう。
「きもひ・・・いいよぉっ・・・たしぎのチンポ・・・きもひぃぃ・・・」
 鈴口から流れ出る愛液の量も増え、次第に快楽によって頭の中は白いイメージだけが浮かび、自制の効かなくなった両手がペニスを徐々に激しく責め立て始めた。
 ぐちゅっ・・・ぎゅちゅぅっ。
 強く2本の手で掴んで上下にしごき立てる・・・。オーソドックスではあるがたしぎの一番好きなやり方だ。
「あー、あっ、あっ・・・あひゃぁぁ・・・!! いいよぉ・・・」
 声も先程押し殺していたのが全て無駄であると思わせる程大きく張り上げられていく。
 彼女にとって自制が利くのは最初だけで、快楽が増して絶頂が近くなると精神的な足枷など無意味である。
「はひゃっ、はひゃぁぁっ、チンポ、気持ちいいよぅっ・・・出る、出ちゃうぅ、出ちゃうぅっ!」
 しごき初めてから間もないというのにたしぎは絶頂まで押し上げられ、ペニスから精液を解き放った。
 どくっ・・・どびゅっ・・・びゅるりっ・・・。
 暗がりに光る精液の飛沫。
 勢い良く飛び散ったそれは寝転んでいたにも関わらずたしぎの黒縁メガネまで降り注ぎ、彼女の顔を自らの精液で汚した。
 もっとも、白い液体で淫靡にデコレーションされた顔を見ると、汚したのではなく化粧したとも言えるかもしれない。
「はーっ・・・はーっ・・・はぁっ・・・」
 射精の余韻に浸り、しばらくたしぎはそのままの格好で天井に視線を定めていた。
 大きいというほど大きくも無いが決して小さくも無い胸が呼吸に合わせて盛り上がり、それが月明かりに照らされて影となって壁へ映し出されている。
 ガチャ。
 突然聞こえたドアノブの回る音に、半開きで虚ろに天井を見つめている瞳は大きく開かれた。
「こら、たしぎ・・・・・・1人でオナニーしちゃだめって何度言ったら解るの? オナニーしたいなら私の前でしなさいっていつも言ってあるでしょ?」
「ご、ごごご、ごごごごごめんなさい、あ、アルビダさまぁ〜」
 アルビダと呼ばれた女は少し不機嫌そうにベッドに横たわったままのたしぎを見下した。
 まだ十代ではないかと思うたしぎの外見と比べると一回り年上のようで、たしぎの持つような可愛さは無いがその分扇情的な大人の魅力を醸し出している。
 慌ててたしぎは上体を起こしてベッドの上に正座した。
 勃起したままのペニスは両手で隠され、徐々に萎え始めている。
「あの、その、あの、その・・・・・・こここ、これはですね、えっと」
「即興で考えた理由なんて言わなくていいわよ」
 しどろもどろに答えようとするたしぎを、アルビダは一蹴した。
「ふぇぇ、ごめんなさい」
「まったく・・・」
 アルビダの手がたしぎのメガネを掴み、そっと取り上げた。
「こんなに精液出しちゃって・・・可愛い顔してヤらしいんだから」
 メガネにたっぷりと付着した精液を舌で全てすくい取るアルビダ。
 萎縮し始めていたたしぎのペニスはその舌の動きに反応し、また勃起し始めた。
 あの舌を、舌技を、メガネじゃなく私のペニスに使って欲しい・・・と、そう願って。
「んふっ・・・たしぎの精液、舌に絡み付いて来るわよ・・・・・・はい、どうぞ」
 メガネに付いた精液を全て舐め終わったアルビダはメガネをまたたしぎの顔に付けてやり、手招きした。
「いらっしゃい、たしぎ・・・・・・まだ射精できるわよね? 今日はいい獲物が手に入ったのよ、2人でゆっくり頂きましょう? ・・・・・・うふふ、朝まで楽しめそうだわ」
 アルビダの誘いに、たしぎの身体は口で返答するよりも早く身体で示し、アルビダの腕を胸に抱いてすがりつくようにして共に歩き始めた。
 

exit